カプチーノ·カシス


「ちゃんと……愛し合ってたんだよ?」

「うん……」

「たくさん、甘い言葉を囁いてくれて……抱くときは、愛海って呼んでくれて。あたし、嬉しくて……」


まるで別れが決まっているかのように、愛海ちゃんは課長との過去を振り返る。

ずっと近くで見てきた彼女の片想いは、小さな花を一瞬咲かせただけで、もう散ってしまうのだろうか……

好きな女の子が自分じゃない相手に抱いている恋心が破れるのは、本当なら喜ばしいことなのかもしれない。

でも、そんな風に自分本位に解釈することができない。

愛海ちゃんの痛みが伝わって……僕まで痛いから。


「ねえ、愛海ちゃん」

「……ん、なに……?」


また、無理矢理作った笑顔で愛海ちゃんが僕を見る。


「帰り、僕のバイクの後ろに乗らない?」


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