カプチーノ·カシス


「これは……?」

「コーヒーとミルク、それに蜂蜜が入ってるの。石原の家って確かちょっと遠いよね。お腹がすいたらそれ飲んで? 結構甘いから満足感はあると思う」


……まさか、愛海ちゃんが僕にそんな優しさを向けてくれるなんて。

驚いて愛海ちゃんを見ると、彼女は照れくさそうに言う。


「今日、ありがとね。石原だってつらいはずなのに、あたしを元気づけようとしてくれたんだよね。そんなんじゃ大したお礼にはならないかもだけど……本当に感謝してるよ」

「ううん。僕にできること、これくらいしか思いつかなかっただけだから」

「あんたって、いい奴だよね。あんたを好きになれない自分がちょっと恨めしいよ」


ちょっと、だけ……ね。

きっと僕はこの先も、その位置から動けないんだろう。

愛海ちゃんのいい奴。

ずっと、永遠に。


「じゃあ、僕行くね?」

「うん、気をつけて」


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