カプチーノ·カシス
◇吉沢 俊樹side◇
残業を終えて家に帰ると、俺を出迎えたのは娘のユメだった。
ユメはなんだか不満そうな表情で俺を見つめている。
「パパおかえりなさい、ユメおなかすいた」
「ただいま、ご飯食べたんじゃないの?」
ユメはぶんぶん首を横に振って、おなかすいたー!と絶叫する。
「ママは?」
「ママ、具合悪いんだって」
……風邪か? それにしたってユメの飯くらいいつもなら用意する筈だけど……
俺はネクタイを緩めながら寝室へ向かう。
扉を開くと、真っ暗な部屋でベッドに横になる妻……塔子(とうこ)の姿があった。
「……ただいま。塔子?」
小声で呼びかけてみたけど、反応はない。熟睡しているのだろうか。