カプチーノ·カシス
「……そんなに乱暴にしたら、割れちゃうわよ?」
そんな言葉とともにキッチンに顔を出したのは、顔色の悪い塔子だった。
「ごめんね、ユメのご飯とかパパがやってくれたの?」
「ああ……別に大したものは作ってないけど。それより塔子は大丈夫なのか?」
「ん……まあ、ね」
まあねと言いながら、全く元気はなかった。
やっぱり、つわりのせいなのか?
「塔子、お前妊娠してるのか?」
何気なく聞いたつもりなのに、塔子は肩を震わせて怯えたように俺を見た。
「う……ん。どうして、わかったの?」
「これ」
俺は戸棚からさっきのコーヒーを出して、塔子の前に差し出す。
「ああ……そんなとこに入れておくんじゃなかった」
「……? なんだよそれ」
「私……産むか迷ってるから」
塔子は俺から目をそらして、唇を噛む。彼女にそんな表情を見せられたのは初めてで、俺は胸がざわつくのを感じた。