カプチーノ·カシス


俺は力なくぶら下げたままだった両手を、塔子の背中に回す。

ああ……久しぶりに、塔子を抱き締めた。

グラマラスな武内さんとは違う……俺の腕に良く馴染む、しなやかな体。


俺はこの小さな肩を、こんな風に震わせたくないから結婚したんじゃなかったのか?

塔子を守りたくて、塔子を笑顔にしたくて、塔子を一生愛したくて……結婚したんじゃなかったのか?

今さら湧き上がる、後悔と自責の念。

俺は塔子の体をそっと離して、潤んだ瞳を真っ直ぐに見つめた。


「……彼女とは、別れる。そんなことじゃ当然俺の罪は消えないけど、もしも塔子が許してくれるのなら……やり直したい」

「……俊、樹……」

「それに……この子にも、会いたい」


そっと、左手で塔子のお腹に触れる。

その薬指に誓いのしるしがあることを、今になって実感した自分が情けなかった。


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