カプチーノ·カシス
「私ね……明日からしばらく、ユメを連れて実家に帰ろうと思うの」
「え……?」
不安そうに聞き返す俺を見て、塔子は涙で濡れた顔を綻ばせた。
「俊樹と顔を合わせたくない訳じゃないの。ただ、ユメの時よりつわりが重いから……」
「そうか……よかった。いや、よくない……よな」
もう自分で何を言っているのかわからなくなってきた。
ただ、目の前の塔子が微笑んでいることが嬉しい。
「だからね……その間に、ちゃんと彼女と別れて。そしたら……正式に迎えに来て?」
「ああ……わかった」
俺はもう一度、塔子を強く抱き締めた。
謝罪と、感謝と、愛しさと。
色んな意味を込めて本当はキスをしたかったけど、今の俺にはまだその権利がない気がして、塔子の背中に回した腕にぐっと、力を込めた。