カプチーノ·カシス
こんな状況にもなって、課長からどう思われるのか気にするなんて、本当にあたしは馬鹿だと思う。
無断欠勤くらいどうってことないほど、既に幻滅されているのは間違いないのに。
「タクシー拾うぞ」
大通りに出たところで、ハルがいきなりそんなことを言い出した。
「え……? 歩いても充分間に合うじゃない」
「課長と話すんだろ? 多分今日も早く来てる」
「……っ」
あたしは思わず足を止めた。
会社に行くとは決めたけど、まだ、課長と話す覚悟まではできていない。
急に胸が詰まって息苦しくなり、家に引き返したいという思いに駆られる。
ハルはそんなあたしの心を見透かしたかのように、あたしの腕をつかんで言う。
「逃げたってつらさが増すだけだ……ちゃんと話して、それでもまだ好きなら好きだと言えばいい。この状況で、もうお前に失うものは何もないだろう?」