カプチーノ·カシス
始業前に開発室で課長と二人きりになるのは、朝日の中でキスをした、あの日以来だ。
同じ場所で向き合っているというのに……あの時とはもう何もかもが変わってしまった。
あたしは彼を抱き締めて、キスをねだることができないし、あたしを欲しいと、熱っぽい視線を向けてくる課長はもういない。
気まずい空気の中、始めに話を切り出したのは課長だった。
「勝手なことを言っているというのは重々承知だけど……俺は、もう武内さんとの関係を止めたいと思ってる。どう謝ったらいいのかわからないけど……本当に、ごめん」
あたしは深々と頭を下げる彼を見つめながら、この関係はもう修復不可能だろうなと、どこか他人事のように感じていた。
だって……あたしを好きなら、もっと罵るはずだ
課長を好きだと言いながらハルとも寝ていたことに、もっと心を乱されるはずだ。