カプチーノ·カシス
「こちらこそ……と言いたいところだけど、止めておく。もうきみを期待させるようなことは何一つ言わないって決めたんだ」
課長はそう言うと、壁の時計に目をやった。
「もうこんな時間か。昨日の不良品のことで朝から会議があるんだ。俺はそろそろ行くよ」
「……はい」
離れていく足音。扉の開く気配。
課長が部屋から出ていったら思う存分泣こうと、唇を噛んで涙を堪えていたその時――
「うわっ! 二人ともいつからそこに」
課長の驚いた声に、あたしは扉の方を振り返った。
「愛海ちゃんのフォローは僕たちに任せて下さい!」
「……お前はお呼びじゃねぇんだよ、あいつの傷を癒せるのは俺だけだ」
「所詮セフレじゃないですか。僕は彼女のちゃんとした友人として……!」
あたしの目に入ったのは、開け放たれた扉の前で言い争う、石原とハル。