カプチーノ·カシス
「……クリーム、ついてる」
ハルの長い親指がぐいっとあたしの口元を拭い、あたしの心臓は飛び出すかと思うほど大きく跳ねた。
「ど、どう、も……」
ハルに唇を触られるくらい慣れているけれど、この場所と、この状況……それが妙な緊張を誘い、あたしは頬が熱くなるのを感じてうつむいた。
「俺の席、どこですか?」
「あ、あぁ。柏木くんは――」
ハルは全く取り乱す様子もなく課長にどんどん次の指示を仰いでいて、なんだか悔しかった。
それにしても、ピシッとスーツを着たハルをこんなに明るい場所で見たの、初めて。
こうして見ると確かにイケメンだなぁと、あたしの隣の席に持ってきた荷物を広げているハルを見ながら改めて思った。
ん……? 隣の席……?