カプチーノ·カシス
あたしと課長の仲はいつも通りにとはいかなかったけど、多少のぎこちなさを除けば仕事上問題はなかった。
昨日生産しきれなかったジャーマンブレンドの残りが追加生産された他は異常もなく、業務は滞りなく終わった。
そんなあたしたちの中で、一番に席を立ったのは課長だった。
「悪いけど今日は先に帰らせてもらう。日報は明日チェックするから」
お疲れさまです、とあたしたちが言う前に課長は慌てて開発室を出て行った。
ただ用事があるのか、それともあたしとの間に漂う気まずさに耐えかねたのかは、わからないけれど。
「僕も母さんのところに寄るので帰ります。お疲れさまでしたー」
石原も、あの防寒グッズでパンパンのバッグを持って早々と出て行く。
しんと静まりかえった開発室には、あたしとハルだけが残された。