カプチーノ·カシス


あたしはハルが帰ったら一人であのマグカップを割ってしまおうと思っていたから、わざとゆっくり業務日報を書いていた。

だけど隣のデスクで日報を書くハルも、いつまで経っても立ち上がりそうにない。


「……帰らないの?」


思わず声を掛けると、疲れきったように盛大なため息をつかれた。


「お前を待ってるんだっつーの。早く書けよ日報」

「え、いいよ先に帰って! あたし……まだやりたいことあるし」

「マグカップだろ? さっさと割っちまえあんな物」

「あんな物って……!


でも、ハルの言う通りかもしれない。

早く壊して……課長への想いを断ち切らなくちゃ。

あたしは椅子から立ち上がり、シンクの水切りかごに伏せてある二つのカップを手に取った。


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