カプチーノ·カシス
百貨店で課長とその家族を見てしまったことを、ハルには黙っていた。
ハルがあたしのことで、あたし以上に心を痛めるということに、最近やっと気づいたからだ。
「……ねぇ、今日何の日だと思う?」
バレンタインの夜、あたしはいつものようにハルのマンションに入り浸っていた。
「そんな回りくどい予告はいらねぇからさっさとチョコよこせ」
「……可愛くないなー」
ソファで隣に腰掛けるハルに向かって口を尖らせながら、バッグをごそごそとあさる。
「はい、結構高いチョコだよ」
「……高いとか正直に言うお前も充分可愛くないぞ」
「いいからいいから、一緒に食べよ!」
ハルはあたしが渡した紙袋から細長い箱を出し、リボンを解いて箱を開けた。
中身はたった五つの小さなチョコ。
見た目は普通のチョコだけど、中に少し個性的なものが入ってるんだ。