カプチーノ·カシス
そんなことを考えながらすっかり機嫌を悪くしたあたしを無視して、ハルはキッチンで真剣に作業している。
「ねぇーまだぁ?」
「……うるさい。話しかけるな」
……何よその言い草!
心底頭にきたあたしが立ち上がると、ハルがふうとため息をついてあたしを見た。
「……今できた。座ってろ」
あたしはむくれたまま無言でソファに腰を下ろす。
あーあ、カプチーノ・カシスが飲みたかった。
拗ねた子供みたいにずっとそんなことばかり考えていたあたしの前に、ハルの淹れたカプチーノが置かれた。
せっかくのバレンタイン。
あたしはあのピンクの泡が見たかったのに。
今日はただの白い泡……
じゃ、ない……?
テーブルの上のカップを凝視するあたしに、ハルが言う。
「……一応、読めるだろ?」
白いカプチーノの泡に、何かが描かれている。
大きなハートと、そして……ハートの中に、浮かんだ文字。