カプチーノ·カシス


ハルにコーヒーの淹れ方を教えるついでに、今日の味当て用コーヒーを淹れてくれと課長に頼まれた。

いつもは課長が淹れてくれるのだけれど、たまには課長も舌が鈍っていないか確かめたいんだそうだ。


「――その味当て、俺もやる」


そう言い出したのはハルだ。


「いや、いくら焙煎課出身だからってこれはまだ早いよ。ちゃんと一つ一つ製品の特徴を覚えるのが先だ」


課長がそう諭したにも関わらず、ハルは引き下がらなかった。


「早いのかどうか、やってみなくちゃわからないですよ」


かなり自信のありそうな様子で言うハルに、最後は課長も「そこまで言うなら」と、ハルに風味テストを受けさせることにした。


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