カプチーノ·カシス

「……行ってきます」



僕は三人からの圧力に押され、仕方なく開発室を出た。



美波ちゃんが冷凍庫に居る理由は、過去に作った製品の中で賞味期限が“今日”切れるサンプルを取りに行っているからだ。


賞味期限のその日まで、ちゃんと美味しく飲めるのかどうか……それを開発室に戻ってチェックするために。



でも、冷凍庫で作業するときは気をつけなきゃならないことがある。

焙煎されたコーヒー豆からは一酸化炭素が出ていて、長時間扉を閉めたままで作業をすると中毒になって命が危ない。


過去に他のメーカーの工場で、それを知らずに重大な労災になったと課長から聞かされたことがある。


それを防ぐために扉は開けたままで作業するということは、もちろん美波ちゃんにも教えてあるから大丈夫なはずだけど……


僕は不思議に思いながらも、工場に入って冷凍庫のある方へと足を進めた。


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