カプチーノ·カシス
「準備、できました」
あたしが声をかけると、課長と石原がスプーンとマグカップを手に作業台まで来た。
まだ自分のカップとスプーンを用意してないハルには、仕方ないからあたしのを貸してあげよう。
そう思って、シンクの水切りかごに伏せてあった自分のマグカップに手を伸ばしたときだった。
「――Gスペ」
凛とした声が開発室に響き、あたしも石原も課長も……驚いて、声の主を見た。
「マンデリンとキリマンがほぼ半々、それに少しモカの香りがする」
コーヒーサーバーを鼻に近づけて、ハルがそう断言した。