カプチーノ·カシス


もしかして……香りだけで!?

あたしは動揺を隠しながら他の二人にも回答を求める。


「課長と、石原は……?」


二人はきちんとスプーンですくった少量のコーヒーを吟味し、じっくり考えてから答えた。


「俺も……Gスペで」

「僕は……家庭用の方だと思う!」


課長が正解するのは予想通りだとして……石原ってば、新入りに負けてどうするのよ。

あたしは一呼吸置いて、正解を発表した。


「柏木さんと課長、正解です。今日は業務用スペシャルブレンドを淹れました」

「すごい……柏木さん」


唯一間違えた石原が素直に放った言葉は、そのままあたしや課長の気持ちと同じだった。

ハルは香りだけで判断したうえに、ブレンドされている豆の銘柄まで言い当てた。

これはきっと、まぐれなんかじゃない。


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