カプチーノ·カシス


その後、実際にハルにコーヒーを淹れてもらう作業をしてもらったけれど、ハルはそれもソツなくこなしてしまい、私に反撃のチャンスはやってきそうになかった。

それどころかハルに気を取られてばかりいたあたしは、片づけるときに手元が狂ってコーヒーサーバーを床に落として割ってしまった。


「ごめんなさい! すぐ片づけます――痛っ!」


慌てて拾い上げた破片で、今度は指を切ってしまった。

傷は浅そうだけど、鮮やかな血がどんどん滲んでくる。


「武内さん、大丈夫? 石原、ほうきとちりとり」

「あ、はい!」


課長は石原に破片の片づけを指示すると、つかつかと歩いてきて私の側にしゃがみ込んだ。


< 36 / 349 >

この作品をシェア

pagetop