カプチーノ·カシス
その後、実際にハルにコーヒーを淹れてもらう作業をしてもらったけれど、ハルはそれもソツなくこなしてしまい、私に反撃のチャンスはやってきそうになかった。
それどころかハルに気を取られてばかりいたあたしは、片づけるときに手元が狂ってコーヒーサーバーを床に落として割ってしまった。
「ごめんなさい! すぐ片づけます――痛っ!」
慌てて拾い上げた破片で、今度は指を切ってしまった。
傷は浅そうだけど、鮮やかな血がどんどん滲んでくる。
「武内さん、大丈夫? 石原、ほうきとちりとり」
「あ、はい!」
課長は石原に破片の片づけを指示すると、つかつかと歩いてきて私の側にしゃがみ込んだ。