カプチーノ·カシス
「武内さん」
課長に呼ばれて、我に返る。
「今日は工場の生産がないから、今までに配合した新しいブレンドを色々試してみようか」
「了解です、わぁ~楽しみ」
あたしは椅子の背もたれにかけてあるエプロンを身につけ、準備に取りかかった。
本社に併設された工場でコーヒーの生産がある日は、一日中忙しい。
工場で焙煎した豆を、一回の焙煎ごとに色、L値(色差計という専門的な機械を使って焙煎度を測った数値)、風味が基準から外れていないかチェックしなければならない。
とりあえず今日はそれがないので、本来の役目である“開発”に専念できる。
そしてあたしは、この仕事が一番好き。