カプチーノ·カシス


「俺……武内さんのこと、すごく大切に思ってて」


本当に……本当にそういうことなの?


「だから柏木くんに渡したくないみたいなんだ」


……勘違いするなと言う方が無理。

あたしの胸は、期待で大きく膨れ上がった。


「課長……それは、どういう――」


からからの喉からやっと声を絞り出すと、課長はにっこり微笑んで言った。


「娘を変な男にとられたくないって思う、父親の気持ち……とでも言えばわかるかな?」


限界まで膨らんだあたしの期待にぷすっ……と、針が刺さった。

そしてシューシュー音を立て、頼りなくしぼんでいく。


「か……課長、あたしの父親にしては若すぎますよ!」


うまく笑えているかわからないけれど、あたしはわざと明るい調子で言った。


< 51 / 349 >

この作品をシェア

pagetop