カプチーノ·カシス
「俺……武内さんのこと、すごく大切に思ってて」
本当に……本当にそういうことなの?
「だから柏木くんに渡したくないみたいなんだ」
……勘違いするなと言う方が無理。
あたしの胸は、期待で大きく膨れ上がった。
「課長……それは、どういう――」
からからの喉からやっと声を絞り出すと、課長はにっこり微笑んで言った。
「娘を変な男にとられたくないって思う、父親の気持ち……とでも言えばわかるかな?」
限界まで膨らんだあたしの期待にぷすっ……と、針が刺さった。
そしてシューシュー音を立て、頼りなくしぼんでいく。
「か……課長、あたしの父親にしては若すぎますよ!」
うまく笑えているかわからないけれど、あたしはわざと明るい調子で言った。