カプチーノ·カシス
帰り支度を済ませて、コンロの所に立つ課長に挨拶をしようと近づくと「ちょっと待って」と引き留められた。
早く帰りたいのに、どうして……
「これ……今日のお詫び」
いつの間に淹れたんだろう、課長の手元にはカップに注がれたコーヒーが湯気を立てていた。
彼はそれに小さな手鍋で温めた牛乳を入れて、チョコレートシロップを加えるとスプーンでかき混ぜる。
……作っているのは、カフェモカ?
そう思っていたら、課長は自分のデスクの引き出しから何か取り出した。
「普通のカフェモカじゃお詫びとしてなんか物足りないなぁと思って、昼メシの後外出て買ってきたんだ」
出てきたのは、袋入りのマシュマロ。
それを開封して三つカップに浮かべると、あたしの前に「どうぞ」と差し出した。