カプチーノ·カシス


ちょっと、ここ、カウンター席なんだけど……

少し恥ずかしさを感じてうっすらと瞳を開けると、バーテンダーは見ない振りをしてシェイカーを振っていた。


「―――ん……っ」


よそ見してないでキスに集中しろ、とでも言うようにハルは両手であたしの顔を包み込み、さらに深いキスを仕掛けてくる。

ハルの飲んでいたウイスキーが唾液とともに流れ込んで来て、あたしをさらに酔わせていく。


「……すげぇ、はしたない顔」


一度唇を離してそんなことを呟いたかと思ったら、すぐに次のキスであたしの思考能力を奪うハル。

何度も何度も合わさる唇と絡みつくお互いの柔らかな舌。

ハルとのそんなキスに溺れるあたしの頭の中からは……

課長の残酷な笑顔は、もう消えていた。


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