カプチーノ·カシス
「えぇっ! なんで課長と愛海ちゃんだけ……僕も行きたいです!」
石原が子供のように、そう主張する。
でも課長がにっこり微笑んでこう言うと、石原は何も言えなくなってしまった。
「――風味テストの正答率」
それを聞いて、やっとあたしが選ばれた理由がわかった。
ハルは来たばかりでまだデータが出ていないし、石原よりはあたしの方が確かに正答率は高いから。
「あの……具体的には何をしに行くんですか?」
課長と二人で大阪、それは嬉しいけれど、難しい仕事だったら浮かれてばかりもいられないと思ってあたしは課長に尋ねた。
「俺たちがいつもやってることを教えるのがメインかな。あとは風味検査のときに武内さんが心がけていることとか、コーヒーを淹れるときの細かい気配りの部分なんかも話せるようにしといてもらえると助かる」
「わ……責任重大」