カプチーノ·カシス
「でも、競合している他社がどんどん安い価格帯のものを出してきて、うちの商品を置いてくれないスーパーも出てきた。風味が落ちるのは承知でどうにか作って欲しいと、生産本部長に言われてしまった」
「そんな……」
そんなことを言われたら、作るしかないじゃない。たとえ美味しくないとわかっていても。
開発室がいやな雰囲気に包まれ、みんな口をつぐんでしまった。
すると今まで黙ってコーヒーを淹れていたハルが、沈黙を破った。
「……俺は、逆を行くべきだと思いますけど」
「逆? 柏木くん、どういう意味?」
「安いコーヒーは他社に任せておけばいい。うちはどこより美味しいコーヒーを追求して、商品にするべきです。ニーズは必ずあります」