カプチーノ·カシス
「でも……それじゃあ本部長は納得してくれな――」
「僕は柏木さんに賛成!」
石原が、目をキラキラさせて課長に歩み寄る。
「これ以上ないってくらい美味しいブレンドを開発して、本部長に飲んでもらいましょうよ! 考えを変えてくれるかもしれませんよ」
それを聞いた課長は、武内さんはどう思う?と視線をあたしに向けた。
「あたしも……柏木さん寄りの考えです。どうせ開発するなら、美味しいと胸を張って言えるものにしたいし……」
でも……課長の立場を考えると、つらいのかもしれないとも思う。
上からは安いのを作れと言われ、あたしたちからは反発され……
間違ってるのは本部長なのに。……あのタヌキ親父め。
たまーに社内ですれ違う、七福神みたいなだらしない体の生産本部長を思い浮かべて、あたしは心の中で舌を出す。