カプチーノ·カシス
本部長に新商品の提案をする日は、大阪へ行く前日。
あまり時間がないので、その日からあたしたちは毎日残業をして試作に試作を繰り返していた。
「このセンでいいんじゃねぇか? エメラルドマウンテンベースのまま、あとは微調整で」
風味に関するハルの感覚はやっぱり鋭くて、方向性は順調に定まってきた。
あたしも石原も揃って頷き、あとは課長の意見を聞くのみ、なんだけど……
課長はさっきからずっと、心ここにあらずといった感じで視線を宙にさまよわせている。
「課長、どうですか?」
あたしが声をかけると課長はハッと我に返ったのか、もう一度試作品のコーヒーに口を付けた。