カプチーノ·カシス
結局、課長に後かたづけをお願いしてあたしたち三人は先に上がらせてもらった。
会社の外に出るとバイク通勤の石原は早々と駐輪場の方向へ消え、真っ暗な夜道にはあたしとハルのふたりきり。
……気まずい。
実は、大阪行きが決まってからあたしはハルと寝ていない。
あたしがハルを欲しくなるのは、恋が上手く行かなくて寂しい夜だけ。
大阪のことで浮かれまくっているあたしには、ハルのことを思い出す余裕もなかったのだ。
「……お前さ」
そのことで何か言われるんじゃないかと予想して、あたしは身を硬くする。
別に罪悪感とかを感じる必要はないのに、なんでだろう。
「朝、マフラーしてなかったか?」
「へ……っ?」