カプチーノ·カシス


言われて、首元に手を当てる。

ほんとだ、ない。

開発室に忘れてきたのかな。でも……


「取りに行くの面倒だから明日でいいや」


あたしはそう言ってハルを見上げた。

かなり残業してしまったから、今日は早く家に帰りたい。


「……開発室に戻るいい口実になるのに、いいのか? まだ課長残ってるだろ」


すると、ハルが急にそんなことを言う。


「え?」

「大阪の話……あれってお前に気があるんじゃないのか? 押すなら今がチャンスだと思うぜ、俺は」


ハルが、あたしの恋を応援してる……?


「ほ……ほんとに、そう思う?」

「あぁ。それに一緒に仕事していて思うが、課長は押しに弱い」


……どうしよう。戻ろうかな、開発室。

でも、ハルの言うことが正しいとは限らないし……


「夜、二人きり、あの狭い開発室。……俺なら、襲う」



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