カプチーノ·カシス


「クソッ……!」


そんな苦々しい声と共にあたしの目に飛び込んできたのは、デスクに肘を突いてがしがしと頭を掻く、見たことのない課長の姿。

あまりに刺々しいオーラを纏っているので、声を掛けるのを躊躇ってしまう。

入り口のところであたしが立ち尽くしていると、椅子から立ち上がった課長と目が合った。


「……武内さん」

「あ……お、お疲れ様です! あたし、マフラー忘れちゃって」


何も聞かれていないのに、言い訳みたいにあたしはそう言った。


「今の……見られちゃったよね?」

「……はい、すいません」


課長はふっと苦笑すると、作業台に置いてあった飲みかけのブラックコーヒーをあたしに勧めてきた。


「これ……飲んでみて」


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