カプチーノ·カシス
あたしは訳が分からなかったけど、とりあえずカップを受け取り口を付ける。
「わ……苦い。それにいやな香りがします」
「当然そうだよね。でもね、武内さん……これが、本部長の求めるコーヒーなんだ」
何かを諦めたような、寂しげな笑みを浮かべながら課長が言った。
「え……? でも、本部長に提案するのは……」
「もちろん、柏木くんの案も見てもらうよ。でもそれしか用意しておかないのはやっぱり怖くてね。俺なりに、ベトナムロブスタの配合を多くしたブレンドを作ってみたんだ……どんな味かは、今飲んだから分かったと思うけど」
課長はそう言ってあたしからカップを奪うと、残っていたコーヒーは廃液用のバケツに捨ててしまった。