カプチーノ·カシス
まるで時間が止まったように、開発室は何の音もしない。
聞こえるのは、大きすぎる自分の心臓の音だけ……
「――ごめん」
静寂を破ったのは、課長の口にしたその三文字。
課長はやんわりとあたしの腕をほどき、一歩後ろに下がった。
ああ、あたしの勝負は、呆気なく終わったんだ。
……と、思ったのだけれど。
「武内さんの同情を引こうとしたわけじゃないんだ。本当にごめん、部下に心配かけるなんて上司失格だよな俺……」
課長はばつが悪そうに、そう言って後頭部を掻く。
「同情……?」
「ありがとう。あまりに情けない俺を見てられなくて、元気づけようとしてくれたんだよね?」
「――違います!」