あの空の向こうに
「母さんが死んだ日、沙羅に会ったんだよ。
そん時、俺沙羅にひどいこと言った。」
「何て?」
「沙羅が『元気ないね』って
言ってくれた時、
ほんとは打ち明けようと思ってたのに、
『お前には関係ないだろ』って
すげー冷たく言っちゃって…。」
沙羅が、
『恭哉が怖くなった一面も…。』って
言ってたのは、この事だったんだ。
「それで、沙羅が泣いて走って行って…。
だから、沙羅に合わせる顔がなくて…。」
それで、他の女と付き合いを持って
嫌われようとしてたんだね…。
「でも…沙羅はもう、
振り向いてはくれないと思う。」
「そんなっ…。」
「だから、俺は、
このまま嫌われ続けることにする。」
沙羅は、まだ
恭哉の事が好きなのに…。
恭哉は、まだ
沙羅の事が好きなのに…。
お互いが遠慮して、
さらに距離が遠くなろうとしている。
「沙羅には、このことを言わないでくれ。」
「なんで?」
「沙羅に、新しい彼氏が出来たみたいなんだ。」
…嘘。
沙羅に、新しい彼氏…!?
「相手は?」
「…柊。」
柊が、沙羅と付き合ってる!?
…前、柊が沙羅を狙ってるとは
聞いていたけど…。
まさか、本当に
付き合い始めたなんて…。
「柊なら、俺より
沙羅を幸せにしてくれそうだしな。」
確かにそうかもしれない…。
でも、沙羅に今必要なのは、
私でもなく、柊でもなく、
まぎれもない、
恭哉なんだよ…。
…なんて、カッコいい事
言えるほど、強くなんてないし。
どうしたらいいのかなんて、
分かんないよ…。
「恭哉は恭哉なりに、
頑張りなさいよね…。」
涙をこらえて言えたのは
たったこれだけ。
「あぁ…。
すっきりしたよ。じゃあな。」
恭哉の声は、笑っていた。
でも、その笑顔は
ものすごく悲しそうだった。