違う次元の迷子センター
出くわしたコンポーザー様

迷子センター

まさかこんなところで出くわすとは思ってもみなかった。
 こんなところがどこかというと、駅前から歩いてすぐ、渋谷モルコのわき道にあたるスペイン坂。
 出くわすなんて言うとなんだか悪いことのようだけれど、むしろどちらかというと嬉しい方のサプライズであって、なんというか要するにただの照れ隠し。
「あれ、」
 ふわふわと柔らかそうな淡色の髪の毛を揺らして、くるりとこちらを振り向いた顔は、私の予想通りよく見知ったものだった。
「ヨシュア…」
「どうしたの。こんなところで」
 スミレ色に透き通った瞳がきょとんとした様子でこちらを見る。まあるくなったその目は相変わらずウサギみたいだと思うけれど。それはこちらの台詞だ。
「別にっ、学校帰りにぶらぶらしてただけだけど……」
「そうなんだ。ダメだよ、真っ直ぐおうちに帰らなくちゃ」
 あんたは私の母親か、と言いたくなるような台詞だったけれど、悪戯に微笑む表情を見れば本気で言っているわけではないことくらい分かる。残念ながら、私は今時学校帰りに寄り道をしないような希少な中学生には分類されない。
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