違う次元の迷子センター
 ヨシュアのシャツを引っ張る手を離すと、少女が道の反対側を指差す。井の頭通りに面した角地、宇田川町交番の斜め裏。柱いっぱいにメニューの貼られたピンク色の建物は、私にはすっかり見慣れたものだった。
「クレープ屋さん?」
 驚いたようなヨシュアの声に、少女が再びこくりと頷いた。
「あのね、このこね。ふわふわ、たべたいみたい」
 たどたどしく告げる少女の言葉に、再びヨシュアと顔を見合わせてしまった。あまくて、しろくて、ふわふわって。
「クレープってふわふわなのかなぁ……?」
 思わず口をついた疑問に、さすがのヨシュアも苦笑している。
「うーん、生クリームのこと……かなあ、っ、と」
 微笑むヨシュアに焦れた様子で、少女がヨシュアの手を引っ張って駆け出した。小さな手に引きずられるように歩き出すと、ヨシュアがこちらを振り向きながら告げる。
「ごめん、ちょっと買ってくるから待っててくれる?」
「わ、私もいくっ」
「?…クレープ、すきなの?」
「クレープの甘いもの系はちょっと苦手だけど…野菜とか、ツナとか入ったやつ好きだから…」
「顔に似合わずあっさりしてるんだね…家ではシャトレーゼのケーキ、バクバク食べてるくせに」
「なっ…」
「まぁ、僕もそう言う系好きだけど。」
こう言う他愛のない会話って、幸せだと思う。
ヨシュアのいろいろなことが知れるし…。無知な私にとって大切なことだった。

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