違う次元の迷子センター
ふとある疑問が頭をよぎって、ヨシュアの手をにぎった。
「なぁに?」
 白い腕は低めの体温のせいかひんやりとしていて、思わぬ自分の行動にどぎまぎしてしまう。
「あ、いや、ヨシュアはちゃんとRGにいるのかな、とか、思って……ご、ごめん」
 慌ててぱっと手を離すと、ヨシュアは出来の悪い生徒にするように優しく微笑んだ。
「僕はちゃんと低位同調してRGにいるけど、この子の足まで見えてるし、触れるよ。一応コンポーザーだからね。君は多分、この子には触れないと思うけど……」
 そう言われて、試しに触ってみたら漫画のようにこの手がすり抜けるのだろうかと考えたものの、考えただけでやめた。それはこんな幼い子どもにとって、かわいそうだと思って。。
「どうして見えるのかは、僕にもちょっと分からないな。僕の波動に影響されて、君のUGへの感度がよくなってるのかも……っていうくらい」
 私自身今までに『見えた』ことなんてないし、生前のヨシュアのように霊感が強かったわけでもないから、それが一番近いのかもしれない。波動の影響云々がどういうことかは分からないけれど、それなりの時間をヨシュアと一緒に過ごしている自覚は、ある。
「……手伝う」
 曖昧に微笑むヨシュアを見据えながら、口をついて出た言葉に、深い意味なんてなかった。と、思う。
「え?」
「迷子センター」
 このまま家に帰って一人の時間を過ごすよりも、ヨシュアと二人で迷子を連れて渋谷をあてどなく彷徨うほうが有意義に思えたのは、けしておかしいことではないと思う。少なくとも私にとっては。
 それに、不安そうで頼りなげな目の前の子どもを見てそ知らぬフリが出来るほど、私は冷血にはなれなかった。
「別に、この後暇だし、ブラブラしてただけだし……目と足が四つあっても困らない、でしょ」
 少しでもヨシュアと一緒にいたい、ヨシュアの役に立ちたい、と正直に言ってしまえたならどんなにいいだろうと思うのに、素直じゃない私の口はぶっきらぼうな可愛くない言い方しかできない。自覚はあっても実際どう伝えればいいのかが分からなくて、ヨシュアの反応が不安になっておずおずとその顔色を窺ってみる。
「いいの?」
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