tender dragon Ⅰ
「あはは、冗談だよ」
あたしばっかりドキドキしていて、何だか悲しかった。
「からかわないでよ…」
そう言ったけれど希龍くんから返事はなくて、代わりに聞こえたのは小さな寝息だった。
さっきまで話してたのに。
「美波ー、昼飯出来たぞ……おい、何それ」
パスタの入ったお皿をもって歩いてきた葉太が、あたしの膝に頭をのせて眠っている希龍くんを見て呆れ顔。
何って言われても、あたしだってこの状況が何なのかよく分からない。
「ん…分かんない。希龍くん寝ちゃった」
希龍くんがたまに動くから、その度にビクビクしてしまう。
少しだけ、くすぐったいから。
コトン。と音がして、葉太が机にお皿を置いたことが見なくても分かった。