tender dragon Ⅰ
「…んー……今、いい…」
今はいらないってこと?
あたし、少しお腹減ったんだけどなぁ。
「美波、腹減ってる?」
「何で?」
「減ってんなら希龍無理矢理にでも起こすけど」
そんなことしたら希龍くんが可哀想だよ。
こんなに気持ち良さそうに眠ってるのに。
「ううん、大丈夫だよ。そんなにお腹減ってないから。葉太は先に食べてて」
「そっか。じゃあ腹減ったら言えよ?」
「うん、ありがと」
葉太が椅子に座ってパスタを食べ始めたのと同時くらいだった。
希龍くんの綺麗な二重瞼が、ゆっくりと開いて、あたしを見つめる。
「え?」
何で起きてるの?って言おうとしたんだけど、希龍くんがシーって言うから言えなかった。
また、悪戯っ子みたいに笑う。
目を見て逸らさないのは、希龍くんの癖なのかもしれない。
少しお腹が好いてるけど、希龍くんを見てるともう少しこのままでも悪くないかな、って思った休日だった。