tender dragon Ⅰ
「いやぁぁあ!!」
呼吸が乱れる。頭が真っ白になって、泣き出してしまいそうだった。
ガバッと起きて辺りを見渡すと、そこには見慣れた風景があって、"あれ"は夢だったんだと頭が理解する。
「はぁ……っ」
何で今さらあんな夢。
もう、2年も前のことなのに…
夢だと分かっているのに心臓はまだバクバクいっていて、怖くて震えが止まらなかった。
「美波ー、お母さん行ってくるわねー」
「…い、行ってらっしゃい!」
玄関の方から聞こえた声に、なるべく明るく返事を返す。
お母さんに心配はかけられない。
仕事を頑張ってくれてるのに、あたしのことで悩んでもらいたくないもの。
お父さんはきっと、もう仕事に行ってしまったんだろう。
「怖いよ……」
怖くて怖くて今にも泣き出しそうなのに、"あの日"を思い出すと、あたしは泣いちゃいけないんだ、と思い出す。
ふとカレンダーを見ると、またドクンと心臓が跳ねた。今年ももう、そんな時期が来たんだ、と。
重い体にムチをうち、ベッドからゆっくりと降りて制服を手に取った。
今年こそは、行かなくちゃ。
そう思いながら…