tender dragon Ⅰ

「加奈、あたしにも紹介して!」


あたしの話なんてほんの一瞬で消え去って、また同じ話題が出てくる。

加奈は得意気に笑って、再び携帯を開いた。


「あたし、トイレ行ってくるね…」

「あー、うん」


あたしの言葉なんて耳に入ってないみたいに適当に返事をする。

そんな3人を見てると、何であたしと一緒にいるんだろう、と疑問に思った。だって、一緒にいる理由がない。


あたしは特別派手なわけでもないし、化粧が上手いわけでもない。スタイルがいいわけでもない。

ただ、席が近かったから?


偶然、席が近くて。

偶然、話しかけられただけで。


きっと何かが少し違えば、全く関わらなかったと思う。話すこともなかっただろうし、目が合うことすらなかった。

今の状況から考えると、そっちの方が良かったのかな、なんて思ってしまう。

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