tender dragon Ⅰ

「本人は無自覚みたいだけどね」

「そうなの?」

「うん。だから希龍、自信ないでしょ?」


言われてみればそうなのかもしれない。

"みんな俺に憧れて龍泉に入ったわけじゃない"と言っていた。

あのときの表情は悔しそうで、悲しそうで。

あのマイペースな希龍くんからは考えられない、複雑な表情だった。


「親が親だからね。プレッシャーを感じるのは当然なのかもしれないけど、自信無さすぎ。期待されてることにも気づいてないんだから」


そういえば、安田さんも言ってた。

希龍くんには期待してるんだって。

希龍くんと葉太なら、また黄金期を築き上げることができるって。


「希龍ね、昔は泣き虫で喧嘩なんて全くできなかったの。」

「え、嘘でしょ?」

そんなの、考えられない。

だって今はあんなに喧嘩が強くて、のんびりしてる。泣いてる姿なんて想像できない。

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