tender dragon Ⅰ
「鍛えてくれる子って?」
「あぁ、あたしたちの幼なじみなんだけどね…」
さっきとは打って変わって、悲しそうな表情。
聞いちゃいけないことだったんだと、一瞬で分かった。
「この話は希龍に聞いて。」
あたし、間違えたな。
初対面なんだから、話せないことがあるのは当然じゃない。ちょっと聞きすぎた。
「そっか…」
「今は無理かもしれないけど、きっと希龍から話してくれるから。あ、先に言っとくけど、彼女とかじゃないからね?」
「あ、そうなんだ」
少しだけホッとしたのはきっと、どこかでその可能性を感じていたから。
「あ、ホッとした?」
核心をつかれて、心臓が飛び出るんじゃないかってくらい大袈裟に動揺してしまった。
そんなあたしを見て、芽衣はクスクス笑う。
「希龍のこと好きなんだ?」
「いやいやいや、違うよ!」
好きじゃない。だって、希龍くんすごくモテるし、あたしなんか住む世界が違いすぎて全然ダメだもん。
あたしが好きになっていいような人じゃない。