tender dragon Ⅰ
見たこともない裏道を器用に通って、気づけば目の前にはあたしが住んでるマンションが立っていた。
「美波さん、着きましたよ。」
「あ……うん、うん、ありがと…」
あたしと希龍くんが付き合ってるなんて、そんなわけないじゃない。
そんなこと言われるなんて思ってもみなかったから、驚いて言葉が出なかった。
「俺、ここで待ってますね」
「家入って待っててよ。ここで待つの、寒いでしょ?」
「大丈夫っす。希龍さんに怒られそうだし…」
何を勘違いしてるのか分からないけど、希龍くんに遠慮してるみたいだ。
わざわざあたしのために来てもらったのに、寒い中待っててもらうのはほんとに申し訳ない。
「何で希龍くんが怒るの?大丈夫だから、入ってよ。絶対寒いから」
あたしがそう言うと、春斗はしぶしぶ頷いてついてきた。