tender dragon Ⅰ
「はい。でも、希龍さんああ見えて頭の回転早いっすから。普段はのんびりしてても、いざというときは頼りになりますよ」
「それ安田さんも言ってたよ。希龍くんは賢いから心配しなくても大丈夫だって」
鞄に私物を詰めながら言うと、春斗は頷きながら「そうなんですよねー」なんて言ってた。
今、こんな話してるから忘れてたけど、あたし安田さんの家に泊まるんだよね?
やっぱり、何か色々まずい気が…
「美波さん」
「何?」
「何か緊張してます?」
春斗にはバレちゃうんだよなぁ。
意外と鋭い。
「さすがに1週間もみんなと一緒だと、緊張するよ。男の人の家なんて泊まりに行ったことないし」
「彼氏の家とか行ったことないんすか?」
「あたし彼氏出来たことないもん。あんまり欲しいとも思ってなかったし…」
彼氏が欲しい、だなんて思わなかった。
彼氏どころか、高校に入って男の人と関わりを持たなかった。
苦手だから。