tender dragon Ⅰ
その音はだんだんこっちに近づいてきているみたいで、近づくにつれて、耳が痛くなるほどの爆音があたしの脳を揺らす。
…それはきっと、無数のバイクの音。
「うっそ、最悪……」
今日は厄日なの?
さっきのナンパ男よりも、こっちの方が危ない気がするのはあたしだけ?
すると、後ろの方からも大きなバイクの音が聞こえる。
やっぱりあたしの人生は今日で終わりなのかもしれない。いや、きっと今日で終わりだ。
前から来るバイクよりも、後ろから来るバイクの方が早かった。
それはあたしの横まで来ると止まった。
それに乗っていたのはさっきの金髪少年。
シャツについてる返り血が、事の大きさを物語っているみたいだった。
「ごめんね。ちょっと、拉致られてくれない?」
理解不能。