tender dragon Ⅰ
シャンプーの匂いかな。
いい匂いがあたしを包んで、葉太の顔がさっきよりも近くにあって。
「え?」
唇と唇が、ゆっくり、触れ合った。
今起こっている状況が理解できなくて、頭が真っ白になって、目すらも閉じられなかった。
目の前には目を閉じた葉太の綺麗な顔があって、葉太は今もまだあたしの手を握ってる。
あたしが知る限りではこれはあたしのファーストキスなんだけど、どうしてその相手が葉太なの?
付き合ってないのに。
そんなことを考えている内に葉太の唇は離れていて、さっきと同じ真剣な目があたしを見つめている。
この状況はマズいんじゃないか、なんて思ってると、やっぱりその考えは当たってたみたいで、また葉太の顔が近づいてくる。
こういう状況は初めてで、どうしていいのかなんてあたしには分からない。
ギュッと目を瞑ると、葉太の暖かい手が頬に添えられて。
近づいてくるのが分かっているのに、避けられない。