tender dragon Ⅰ
黒くて大きいバイクに乗った金髪の彼は、少しだけ楽しそうに笑った。
この状況で笑うの?
何を言っているのか分からなくて、必死に考えているうちにヘルメットを被らされる。
「ちょ、あの…え?」
「あれ、俺の敵なんだよね。」
「て、敵っ?」
「うん。とりあえず撒くから、ちゃんと捕まっててよ?」
俺の敵?
撒く?
「うそ、ちょっと待って!」
「ごめん、顔伏せてて。」
向かってくる無数のバイクのライトが眩しい。
それに向かって、スゴいスピードで突っ込むこのバイク。
大きなバイクなのに、運転さばきは手馴れたもので、無数のバイクを見事に交わす。
顔を伏せてて、と言ったのはきっと顔を見られないように、だろう。
顔を見られてはいけない理由があるんだ。