tender dragon Ⅰ
酔ってたからだったんだ。
葉太はあたしのことなんて好きじゃない。
あれは、酔ってたから言っちゃっただけで、あの言葉に意味なんてない。
「葉太、風邪引くよ」
きっと、酔いが覚めたら葉太だって忘れてる。
あのファーストキスもなかったことになってるはず。
でもやっぱり、近づけないなぁ。
「んー…」
希龍くんは唸る葉太の腕を引っ張ると、自分よりも背の高い体を支えて葉太の部屋に歩き出した。
「葉太重いんだけど。」
「ん、わりぃ…」
重い、なんて言うくせに、しっかり支えていてフラついたりしない。
葉太を支えることくらい、希龍くんには簡単なことなんだ。
それにしても、いつから見られてたんだろう。
希龍くんはどこまで見たんだろう。
もしかして、全部?