tender dragon Ⅰ
「キスしていい?」
唐突なその言葉はあたしを混乱させるには十分な内容だった。
さっき以上にカチコチに固まってしまったあたしの体はもう自分の意思では動かせそうもない。
「美波?」
さっき希龍くんは"キスしていい?"って言ったんだよね?
何で?
「な、んで…?」
頑張って絞り出した声はあたしが生きてきた中で一番小さな声だったかもしれない。
希龍くんが目を逸らそうとしないから、あたしも逸らせなかった。
「…ダメ?」
甘えるみたいにあたしを見つめる希龍くんは、とてもじゃないけど龍泉のトップとは思えない。
「……えっと…あの…」
何て言えばいいんだろう。