tender dragon Ⅰ
うさぎのキーホルダー
「―――…はい、分かりました。」
電話を終えた春斗が、あたしを見て少しだけ嬉しそうにニコッと笑った。
「何かいいことあったんすか?」
「え?」
「美波さん最近ずっと楽しそうですよ。」
いいこと、というべきなのか分からないけど、あの日から1週間、希龍くんとの距離が縮まった気がした。
けど、付き合ってるわけじゃない。
キスだってあの日限りだし。
「…そう見える?」
「はい、美波さん分かりやすいですし。」
いつものようにヘルメットを被せてくれたあと「希龍さんが待ってるんで」と言ってまた笑った。
「どこで?」
「西高っす。」
乗り慣れたバイクのキーには、この間あたしがつけたブサイクなうさぎのキーホルダーがついてる。